2015. 01. 13  
2010.7.19日本ラグビーのなんでやねん?
第2章、「日本のラグビー現場を見て」を載せよう。

2、日本のラグビー現場を見て

最近、日本の大学、社会人ラグビーの現場を見て、 感じたことは、国内外のラグビーの情報がすぐわかるからか、どこのチームも自チームの選手能力にあった独自の戦略、戦術、を熟考するというよりも、いま世界で流行しているスタイルのラグビーを目指すということが、多いようにみえる。 
その結果、敵より走力、コンタクト力もないのに、 敵の出方をみて、 ゆっくり出るディフェンスをしたり、正確で素早いロングパスも出来ないのに、ワイド
ポジション一辺倒でやるアタックを行う、などが多くみられ、なぜもっと自分の「身の丈にあったラグビー」を模索しないのか、不思議でならない。

たとえば、トップリーグなども外人コーチ、外人選手が必ずおり、どうしても、 彼らの考え方中心の戦法に、なりがちなようである。
しかし、陸上の為末が言っているように、「日本人の骨格と、 外人の骨格は違い、日本人は前傾姿勢で走った方が良い」のに、 高い姿勢のままで走るなど「身体の出来、ものの考え方、思考のプロセス、よってきたる文化」など、すべて外人とは違うのに、 「心と身体が連動するラグビー」を、 外人の指導そのままに、やろうとしているのには、無理があるようにみえる。

現場をみて、ちょっと日本ラグビーに合うのかな、と思うことを列挙すると、、、
①外人コーチは、 短期に成果をあげることを要求されるため、その戦法や、練習方法が日本人プレーヤーにあっているかどうかを考える暇なく、俺達はこうしてきたからと、 押し付けているようにみえる。あるいは、こんな「サイン、練習方法」があると、その全部をやりたがる。
その結果、日本人プレーヤーは、その練習方法やサインプレーを覚えるだけで精一杯で、短くなった練習時間の中では、その本当の意味も、 分からないまま、練習を消化するだけに、とどまるようにみえる。また、数多くのサイン
プレーを、年間同じメンバーで数回も練習出来ず、習熟とはほど遠く、結局ゲームで使うと、ミスを頻発させるようにみえる。

②外人コーチに、3対2のアタックディフェンスの練習で「厳しい相手なら捕まる場合、或はミスをすることもあるのだから、その場合の練習もすべきでは」と言うと、「うまくやれば捕まらずに出来るはずのものを、できないのは選手が悪い。ミスを前提とするような・ネガティブな練習は、必要ない」と言う。
「いや、捕まっても、あるいはノッコンじゃなくウシロにそらすようなミスがあっても、そこからボールを動かすことが出来れば、それを予想していない敵なら、逆にチャンスになるのだから、その方がポジティブな練習だ」と、やらせたことがあった。

③外人の教える練習方法には、ラグビーボールでハンドボールゲームをやらせるようなものが多く、それ自体は、視野広い判断を訓練するもので良いのだが、日本人にやらせると、その意味を理解しないまま、どうしても「遊び」になってしまい、ゲームでの状況判断の練習にならず、かえって自分の走っているコースを自覚できずに、ゲームでスローフォワードを平気でする・欠点を助長するようにみえる。

④外人コーチは「最近のラグビーに、フィットネスは要らない、グランドを左右に分けて、役割分担すれば良い」と言う。15人のオールラウンドプレーヤーを揃えられる彼らは、それで良いかもしれないが、日本のラグビー界では、例えば、かなりのレベルまで、ディフェンスのアンマッチ(BKのアタックにFWの第一列のディフェンスでは抜かれる)が起こる。各ポジションに必要な身体能力、専門技を鍛え、ポジションごとの精度を極限まで高めた職人ラグビーとオールラウンドプレーヤーを揃えて、大まかなラグビーをするのと、どちらの方が日本のラグビーに向いており、より効率的かは、自明の理であろう。

⑤ほとんどのチームは、15人中の2人の外人選手に、突破役をやらせるため、外人選手のレベル、その好不調により、ゲームが左右されるようにみえ、さらには、日本人プレーヤーは、彼らに頼るため、自分でディフェンスを切り裂いていくという ・ スキルアップの機会を、自ら放棄しているようにみえる

など、いっぱいあるのではないか。

たしかに、オーストラリアでは衛星通信で選手を追跡し、その軌跡を調べて考えるなど研究は進んでおり、そういった研究成果の中で、日本人の身体や考え方に合致するものはドンドン取り入れるべきだが、その根本の意味合いを斟酌せず、ただ真似をするのは考えものである。

要するに日本人の考え方、文化などに精通していない外人コーチに、丸投げして指導させるには、限界があるのではないだろうか。心と身体が連動するスポーツ「ラグビー」は、メンタル面を含めて、日本人コーチがヘッドでやり、全体方針に乗っ取って「パート、パート」を、任せるべきではないか。

練習方法についても、日本人の選手が考えやすいように、出来る限りゲームシチュエーションでやる方が、良いのではないか。また外人選手の使い方についても、「突破の仕掛け」は日本人でやれるようにしないと、外人に頼っていては、何時まで経っても、日本人プレヤーは、進歩しないのではないか。
そして、各チームとも、持てる戦力に見合った「独自の戦略、戦術」を熟考し、それを当面の敵のレベルを勘案して、完遂できるようにするべきで、 「ゲームに即した練習方法」も、独自に考え出すべきではないか。

横井感想 : 何度も書いているように、この記事は「2007年11月早稲田OB会報」に記載したものである。しかしながら、いまだに多くのラグビー現場では同様のことが、起こっているのである。「百年、河清を待つが如し」か?
なんとか早く、自チームの現場をよく洞察し、改善して欲しいものである。


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プロフィール

Yokoi Akira

Author:Yokoi Akira
横井章(よこいあきら)

ラグビークリエイター
現役時代は左CTB、ジャパン10年で17キャップ
    (当時は、キャップ対象試合が少なかった)

1968年、オールブラックス・ジュニアに勝利
1970年以降5シーズン日本代表の主将を務める
    (いまだに、歴代最長記録)
1973年、英仏遠征、日本ラグビー史上初の海外
     テストマッチ、当時世界最強のウェールズ
     と対戦、写真は、その時の幻のトライ
2000年、現場に戻り、100数チームにアドバイス

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