2015. 01. 27  
2010.7.23なぜ、ミスが多い
「日本のラグビーⅢ」はモールを規制する試験的ルールが行われた2008年のシーズン、トップリーグ最初のゲームがあった時の話で「早稲田OB会報」に、「なぜ、 ゲームが切れる」と題して、書いた文章である。

  日本のラグビーを考えるⅢ            2008.9.16 
                                横井章(昭40年卒)

8年前に現場に戻って始めた「日本ラグビーを魅力あるものにする運動」も、孤軍奮闘から段々賛同者が増えて来た。また、日本のラグビーを良くするには、早稲田だけが強くても駄目で、対抗して切磋琢磨でき、勝てるチームを育てる。
さらに、もう悪い癖がついてしまった社会人は無理。教えるなら高校、大学の時期にという観点で、現在までにアドバイスしたチームは高校で20チーム、大学で10チーム、社会人で3チームを数えるほどになってきて、「日本人の特性を生かした、攻守ともに前に出る・変幻自在の面白いラグビー」を、多くのチームが目指すようになってきた。
早稲田もようやく中竹監督になってから、攻守とも前に出るスタイルを採用し、面白いゲームを見せられるようになってきたのは、喜ばしいことである。

しかし、世界のラグビーは、プロ化が進みコンタクト中心の格闘技ラグビーが主流となり、ディフェンスが進歩してきてというより、アタックの進歩がないまま、「ディフェンスのラインを5メートル下げる、モールをやりにくくする、タッチに出たボールを素早く投げ入れ易くする」などルールの改正で、「いままでのルールでも出来る展開ラグビー」を、 無理やり推奨する「新ルールの試行」を始めた。
日本も、各チーム夏合宿の最中に、ようやく、レフリー間のすり合わせをするという拙速ぶりであり、それに追随せざるを得ず、今シーズンの混乱ぶりは推測に余りある状況ではないか?

そんな中、日本のトップリーグが開幕、まさに、日本のトップを争う「三洋電機対サントリー」のゲームがおこなわれた。私は前述のとおり、社会人ゲームにあまり興味はないので、見る機会もなかった。
しかし、御所工実高校(高校チームへのアドバイスは、京都成章高校に5年間のアドバンテージを与えた後、2~3年前から手を広げ、機会あれば各校にアドバイスしてきた。その中でも、 一番忠実にやろうとしてくれるチームのひとつで、この春、公立高校でありながら選抜大会で準優勝したチーム)の竹田監督が「このゲーム、笛が多くて細切れなんです。こんなんでよいのでしょうかね、一度このビデオ見て、意見下さい」と言われ、ビデオをみて驚き感じたことがあったので、「日本のラグビーを考えるⅠ、Ⅱ」に続き、「Ⅲ」を、 投稿しようと思った次第である。

1、なぜゲームが切れる?

私も、最近のゲームは続かないなーと、漠然とは感じていたが、80分間どれほど切れるのか、なぜ切れるのかを数えていなかったのは、大いに反省した。(各チームともデーター分析が進んでいて、こんなことはもう承知の事実であろうし、それを踏まえて対策を練っているはず。そんなことも知らずに、何をいまさら言っているのかと言われそうだが、、、)

いや、だからこそ驚いたのである。夜中にビデオを見ながら指を折って数えた数字だから、正確とは言い難いが、このゲーム80分間で、120回切れていた。その内訳は、タッチキックなどで切れたのが40回、フリーキックも含め反則数が40回、ノッコン、スローフォワードなど単純ミスが40回、という概算になっていたのである。

竹田監督は、反則数の多さについて言及して欲しかったようだが、これは前述のような混乱状況の時のこともあるし、またレフリングについては、前回にも「ゲームを管理するために杓子定規に吹くのじゃなく、ゲームの流れを壊さない笛を心がけて向上して欲しい」と要望したので、確かに笛が多いようには思うが、それについては、日本のレフリーの今後の伸長を願うばかりである。
逆に、ラグビー指導者としては、「犯さざるべき神域に、ゲーム中グランドの外から文句をいう風潮」に、情けなくなる方なので、ここでは別の話としたい。

話をもとに戻して、何に驚いたかというと、この「単純ミス40回」なのである。
それも、ほとんどが「ノッコン」なのである。そして、これを少しも異常だと思っていないように見える・ラグビー関係者の様子なのである。
先ほども書いたように、分析データも駆使して対策を練っているはずなのに、この結果である。
そして、数えてなくても分かる状況なのに、解説者は「暑いから汗が出て手が滑るんでしょうね」と、さも選手が可哀そうとばかりに同情する。
チームのコーチからも、「ミスをなくすような具体的な指示を出した」というような話も出てこない。
見ている観客の方も、そういう状況下で、片手でハンドオフしてずらそうとする選手を、「強いなー」と感心している。
誰一人として「80分間で40回もノッコンするようなラグビーはラグビーゲームじゃない。こんなゲームを金を出して見ろとは何事か」 と、怒らないのである。

なぜ、こんな無責任な、自己中心満載のラグビーを、おかしいと思わないのか、まさに今、日本の社会に起こっていることと、一緒ではないか?
「ラグビー」、お前もか?である。
だから私は、社会人のゲームを見ないのである。見ても何の参考にもならない。逆に、このことが分からないラグビー初心者に見せたら「百害あって一利なし」は極端としても、決して良い影響を与えないのではないか?

少なくても、日本のトップリーグの指導者には「こんなことを思う奴もいるんだぜと」と知ってもらって、日本のラグビーが格闘技ラグビーじゃなく、見ていて面白いボールゲームになるようにして、他の模範になるようになって欲しいねと、願うばかりである。

2、この教訓を生かして

この監督とのやりとりを、御所工実の生徒にも話をし、私の推奨する「ミスのないラグビー」を目指そうと話をした次の日、大阪のカーニバルで、御所工実―常翔啓光学園のゲームが、行われた。御所工実にとっては春の選抜大会決勝のリベンジ戦である。

当然、時間は60分。天候は直前に雨が降り下の芝は濡れ、最中も雨がぱらつくゲームだったが、このゲームが切れたのは、41回、内訳は、反則が18回、単純ミスが10回、タッチなどが13回であった。
そして、スコアは御所19-13啓光で、トライ数3-2本で、御所のリベンジがかなった。相手の啓光もミスの少ない、素晴らしいラグビーゲームだった。

こんなことを言うと、コンタクトのレベルが違う、ディフェンス力が違う、難しいことにチャレンジしていないなど、いろいろ言い訳を探す人が多い。
しかし、それらが違ったら、ミスの多いラグビーをしても良いのだろうか? 
そのような状況下でも、ミスなくできるように工夫しなければ、見ていて面白いラグビーにならないのではなかろうか?

では、どうすればミスをなくせるのか?そんなことはみんな知ってるはずではないか?
でも、知っていても、 それをやらせない?それが一番性質(タチ)が悪い。
日本のラグビーを良くするために、何をしなければならないか?
指導者の皆さん、現代っ子を指導するのは大変だけど、熟考して正しい道に導いてやってほしいと、切望してやまないものである。

横井感想 : 最近のゲームは、私が推奨した「ボールを両手で持ち、細かく、早く動かす」、 「サポートを立体化して、ミスをミスにしないようにする」などの対策が進められて、ハンドリングエラーの数が各チーム一桁になって来たのは、ご同慶の至りである。


関連記事
スポンサーサイト
NEXT Entry
『アーカイブ:18』
NEW Topics
⑦:アタックについて
⑥:アタックについて
⑤:アタックについて
④:アタックについて
③:アタックについて
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

Yokoi Akira

Author:Yokoi Akira
横井章(よこいあきら)

ラグビークリエイター
現役時代は左CTB、ジャパン10年で17キャップ
    (当時は、キャップ対象試合が少なかった)

1968年、オールブラックス・ジュニアに勝利
1970年以降5シーズン日本代表の主将を務める
    (いまだに、歴代最長記録)
1973年、英仏遠征、日本ラグビー史上初の海外
     テストマッチ、当時世界最強のウェールズ
     と対戦、写真は、その時の幻のトライ
2000年、現場に戻り、100数チームにアドバイス

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
QRコード
QR