2015. 02. 19  
2010.7.25練習の『なぜ?』
続いて、「練習のなぜ?」第3章を、載せよう。

3、最近の練習で、少し変だなと思うこと

①なぜ、マーカーを置いて、その通りやろうとするのか?

たとえば、ストレートランでパスする練習をするのに、あえて内側へ走るようにマーカーを置いて走らせ、なお且つ外側へパスせよとやらす。
何故、内側へ走らすのか聞いてみると、ゲーム中ゴールラインに直角に走れないものだから、あえて内側に走ってまっすぐ走れるようにするのだという。それこそ、今どちらを向いて走っているのか、イメージすることの妨げになるのではないか?
そもそもゲーム時には、マーカーは置いてないのである。自分がどちら向いて走っているか?それを認識しながらやることこそ、練習ではないのか?
練習方法を最初に教える時くらいは、マーカーを使うのはやむを得ないとしても、できる限りプレーヤーが自分で、グランドをどう使うか、イメージできるように、マーカーなしでやらせるべきではないのか?
また、内側へ走って外へパスしろなんて、BKでも難しいのに、FWにまでそうやらす。
それより、ゲーム時は少し斜めに走った状態から、まっすぐに走り、次に外に向かって一歩踏み出してパスをするという方が、余程実際的で、なお且つ、今のプレーヤーの苦手な「外へのサポートへ、すぐに行けるように」、練習させるべきでないのか?

②なぜ、シークエンスに書いて、その通りやろうとするのか?

前項と似たようなところであるが、数次のアタックの配置を、シークエンスに書いて、その通りに動く練習をするチームが多い。
たとえば、5次のアタックをシークエンスに書いて、接点となる予想のところに、ダミーを持ったディフェンサーに見立てたプレーヤーをおく、そしてアタック側が攻撃を始めるが、2次3次になると接点予想と合わなくなる。
そこで何が起こるかというと、アタック側がダミーを持っているところへコースを変えて、当たりにいくのである。また5次目はディフェンスが居なくてパスをするのだが、前へ進んでいてインゴールで回しているのである。

これで、どんな弊害が出るかというと、実際のゲームでも5次のアタックをやり続けようとするのである、それだけのつなぎをミスなく出来ないのにである。
また、その間に自分の目の前に「抜けるスペースが出来た」のに、そこをつかずに、シークエンスをやりとおそうとするのである。
また、インゴールでパス?こんな変なラグビーが、ある筈がない。

これでは、プレーヤー自らが、 自分の前の状況を判断して行動するという、ラグビーの最も重要で、最も特徴あるところを、自ら放棄しているようなものではないか?
あるチームでは、15-15でのキックゲームをやらせたのだが、「横井さん、これをシークエンスに書いて下さい」と言われて、唖然としたことがある。
これも、論外である。

③年に数回も練習しないサインや、ムーブを何故やらせたがるのか?

チームによっては、基本的なムーブやサインを入れると、10種を超えるものをやろうとする。昨今練習時間が短くなり、たとえば、パートの練習で、なお且つ、BK全員のラインアタックとなれば、週の練習日の内の1~2日で、時間にして何分もない状況で、また怪我人やメンバーが変わることを考えれば、「同じメンバーで、同じムーブを年間何回練習できるのか」という状況で、なぜそんなに多くのものをやろうとするのか?
当然練習不足で、ゲームで使えばミスをするのがオチである。
できる限り絞って、但し少々ボールの出のタイミングが悪い状況でも、完遂できるようにすべきではないか?

④何故、練習でプレーヤーの持てる力の100%を、出させようとしないのか?
 
練習でミスをすると、即「アゲン、練習にならないじゃないか」と怒る指導者が多い。しかし、実際のゲームでは、そういつも、うまく行くのだろうか?確かにミスの原因、責任の所在をはっきりさせるのは、当然重要であり、腕立てなど罰を与えるのも必要であるが、もっと重要なのは、練習では、自らの能力の限界まで挑戦させること、あるいは経験し得ていないことに挑戦することを、恐れさせないことではなかろうか? 
怒り過ぎると、プレーヤーがミスしないように、80%の力でやろうとするなら、本末転倒だろう。

また、そうして挑戦させたことで起こったミスは、きっちりミス処理させた後で、アゲインすべきであろうし、たとえばパスがそれただけで、ノッコンにならない場合などは、続行させてやる練習を、やるべきである。実際のゲームでも、
その場合の方が、チャンスになる場合が多い。

さらに、もっと積極的に、プレーヤーが経験し得ないスピードに、挑戦させる練習(たとえば坂道を走り下りるなど)を行うべきである。
また常にゲームと同様に負荷をかけた形で、練習させるべきでないか?たとえば、キックの練習といえば、二人が向き合って、待ち構えているところへ蹴る。そんな練習をしているから、ゲームで蹴ったボールが、敵のいるところへ行くのではないか?待ち構えていないところへ蹴る方が、捕る練習にもなって、効率が良いのでは?

また、よくあるのがアタックディフェンスの練習で、「タッチですか?ホールドですか?ガチですか?」「何本やるのですか?」という質問である。
まずタッチなんて高い姿勢のもとだから、やらせるべきでない、最初にムーブを教えるのにホールドでやるのは仕方がないとしても、ゲームのための練習なら、基本的にはガチだろう。
高校生までは身体の出来具合などあるので、ホールドでやる場合もありかと思うが、早く身体が出来るように推進すべきである。
「ケガ」というのは、前向きな気持ちでやれば、身体は自然に対応能力を発揮するものだから、却ってケガしないものである。ホールドなんて中途半端なやり方の方が、ケガしやすいというのも、真理ではなかろうか?

もうひとつの「何本?」と聞いた奴の心理は、「3本なら、3本出来るように、
80%で3本やろう」と、計算する者が多いということである。
しかし練習というのは、そういうことだろうか?「何本であろうが、一発目から自分の100%以上を出そう、そのあと50%に落ちても、限界に挑戦することが重要だ」
と思うように、指導すべきではなかろうか?

⑤なぜ、気の向かない練習をやらせるのか?

年齢の高い指導者は、自分の経験で、きつい、しんどい、いやな練習こそが、克己心も鍛えられて良い練習だと考え、それを、今の若者に強要しがちだが、本当にそうだろうか?
確かに基本技を根付かすには、繰り返し反復練習が必要なものが多いが、それでも飽きが来ないよう目先を変えて、実は、 同じことを鍛えてるといった工夫をしたいものである。

また、プレーヤーがいやだなと思う練習は、結局は身に付きにくい。
たとえば、誰でもディフェンスの練習は、嫌いなものだが、3-3のアタックディフェンスの形のところに、さらにFWの位置から、 3人のディフェンサーをつけてやると、どうだろう?
そして6-3で、ターンオーバーまでと言ってやると、たいがい「ディフェンス側のほうが楽や、得や」ということで、ディフェンスにまわる者の方が、多くなるのでは?

⑥ゲーム前の気合入れは、単なるパフォーマンス?

今、私が気になっているのは、ゲームの最初から、100%の力を出させるには、どうすれば良いかということである。
最近はゲーム直前に歌を歌い、大声で気合いを入れ、泣かんばかりの形相でグランドに出ていくプレーヤーをみて「気合入ってるな」と見ていると、ものの何分も経たない内に、あっさりトライをとられたりする。あれは何だったのか?ただのパフォーマンスだったのか?とがっかりすることがある。

ゲーム前の練習も、みんな揃って、いつもトレーナー主導で、 決まったことをやるだけ、試合に臨む気持ち、身体をつくっていくのは、各個人によって違うのではないか?
大昔のことを言えば、ゲーム前の気持ちのつくり方は各個人、ゲーム前の練習はキャップテンが主導、その時の敵に対して「今日はこのことを忘れるな」という意味で、その練習をゲーム直前にしたような記憶がある。

もともと、 日本人は農耕民族、ゲームの最初から100%を出せるように、じっくり準備をしたものである。
対して外人チームは、ゲーム前の練習は、軽くウォーミングアップするだけ、そして、ゲームをやっている間にコンディションを整えながら、敵の情報も収集し、戦い方を変えてくる。しかし、彼らは狩猟民族、そんな中でも何かあれば、「瞬間湯沸かし器」のように熱くなれる。
しかし、最近U20の外人チームを見ていると、ゲームの最初から100%でやってくる。外国も変化している。どのようにしてるのだろう?

「ラグビーは、心と体が連動するスポーツ」、ゲームの最初に、どのようにして『心』をつくっていくか?
今の日本の若者の『心のつくり方』を、模索しているところである。

日本のラグビーを良くするために、何をしなければならないか?
指導者の皆さん、現代っ子をを指導するのは大変だけど、熟考して正しい道に導いてやってほしいと、切望してやまないものである。


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プロフィール

Yokoi Akira

Author:Yokoi Akira
横井章(よこいあきら)

ラグビークリエイター
現役時代は左CTB、ジャパン10年で17キャップ
    (当時は、キャップ対象試合が少なかった)

1968年、オールブラックス・ジュニアに勝利
1970年以降5シーズン日本代表の主将を務める
    (いまだに、歴代最長記録)
1973年、英仏遠征、日本ラグビー史上初の海外
     テストマッチ、当時世界最強のウェールズ
     と対戦、写真は、その時の幻のトライ
2000年、現場に戻り、100数チームにアドバイス

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