2011. 10. 21  
新しい読者に、ブログ開始時の記事を、再度紹介しています。
201016日:問題解決のヒントとなるか?
この「日本のラグビーを考えるⅠ」という文章は、2001年くらいに書いたもので、大変長い記事で、また当時は太字も使っていないので、読みにくいと思いますが、敢えてそのままにしておきます。


「小、中学生にラグビーをどう教えるか?」の問題について、皆さん考えられましたか?色々ご意見があると思いますし、どれが良いのか?すぐ実現できるのか?など、なかなか纏まらないと思いますが、私の拙いアイディアを、申し上げると、、、

組織としては、現在のラグビースクールを活用する。但し、「芝のグランド」、或いは「草のある広場」を出来る限り確保する。確保できた場合には、「ラグビー」をする。確保出来なかった場合、即ち「土のグランド及び広場」しか確保できなかった時は、「サッカー、ソフトボール」などをやる。また、「体育館」を確保出来た時は、「バスケットボール、ハンドボール」をやる。「道場」を確保出来た場合には「柔道、相撲」をやる。

要するに、「各種スポーツ」を、それを「本来やる場所」が確保出来た時に、やれば如何ということ。何もユニホームを揃える必要もなく、ソフトボールも素手でやるくらいの感覚、即ちボールさえあれば同じ「ボールゲーム」をやれるのでは、、、
教えるのは、父兄で経験者が居れば良いし、居なけりゃその時だけ呼べば良い。但し、指導する際は、そのスポーツをよく勉強して、出来る限り「そのスポーツを基本通りに正しくやらせること」に心がける。そうすれば、指導者も他のスポーツの基本を勉強出来るし、理解できるようになる。即ちラグビーは、他のスポーツの基本技はすべて、活用できるのである。

この方が、「ボールを受ける、投げる、蹴る、広い視野を持つ、下半身を鍛えられる、格闘で身体の使い方が出来るようになる」など、ラグビーというボールゲームをする上で必要な基礎体力、基本技が培われるのではないか?そして、「怪我」の問題も少なくなり、「遊び感覚で伸び伸び出来る」ことにより、知らず知らずに、身体能力が伸長する。それこそが後のラグビーのスキル向上に役立つのではないか?

例えば、今ラグビーでキックオフのボールが誰の手にも触らずに地面に落ちる。ソフトボールをやらせるとフライを取れないのと共通しているが、やらせれば向上する筈。またラグビーだけだと恐怖が先に来て、目の前の敵だけしか眼に入らないが、サッカーでパスを通すのに広い視野でみるようになれば、状況判断力は向上する。さらにバスケットのジャンプでアジリティが向上し、柔道の受け身で身体の安全な使い方、相撲で立会いの駆け引き、などが覚えられるのである。

またラグビーは、芝あるいは草の上であれば、本来の草地に転んでも痛くなく、汚くなく、怖くもなくなって、思いっきりやれるのではないか?そして「ボールは両手で持て」などの基本をきっちり教えられ、「片手で持つという悪い癖」、或いは「地面に親しめないという悪い癖」もつかないのではないか。

そして、何より効果が期待できるのは「味方と協力しようという心」の醸成である。前回述べたように、小さい時からラグビーをしていると、「目の前の敵との関係だけの世界に入ってしまい」「自己中プレーになってしまう」というのが、「ラグビーのガン」になっているのである。例えば、バスケットボールでの「ブロック」を覚えれば、ラグビーで「敵のディフェンスコースに入って、自分より有利な味方につなぐことが出来るようになる」など、即ち「自分だけが生きれば良いという自己中プレーから、自分の身を挺して味方につなぐというチームプレーが出来るようになる」のである。
まだまだ続くこの話、また明日に御期待を、、、

それでは、「日本のラグビーを考えるⅠ」の最終章を載せよう。

5.チームプレーについて

全国高校ラグビー大会では、自己の戦力を良く認識した先生が、チームにあった戦い方をして勝つという面白いところも見受けられるが、多くは良い素材を集めて、個人の強さの寄せ集めで勝つ傾向にあり、組織的な戦い方という点では、まだまだ改善の余地があるのも確かである。強豪チームの選手が高校レベルで通用した個人プレーに甘んじ、かえって大学のチームプレーにとけ込めず、その後の進歩がとまる感じもある。 

大学、社会人では、攻守が低いレベルで拮抗していて、第一次の攻撃で突破できず、逆に守備でもターンオーバーできず、攻守どちらかがミスをする迄、延々と横一線の力ずくの攻防が続いて「チームで突破する」とか「組織ディフェンスでボールを奪取」するなど「攻防の多彩な技術、戦術、戦略」があまり見えない、面白くない、全く同じ型のラグビーを目指しているようにみえる。戦力も選手のレベルも違う各チームが、なんの工夫もなく、同じラグビーを目指すこと自体が、変ではないか。

そして、国内では通用するが外国チームには劣る体位、体力で、外国チームとほぼ同じ戦法で戦おうとしているようにみえ、勝てっこないのは当たり前である。
どのレベルでも、もっと自チームの特徴を徹底追究し、それを生かした、また対戦チームに対応したオリジナルなラグビーを工夫できれば、即ち「小よく大を倒すラグビー」ができれば、こんなに痛快なことはないはずであり、そんなチームづくりに意義を見い出したいものである。

その為には、指導者はプレーヤーの素質、伸長度予想、敵チームの戦力推定などから、チームの長期目標と年度目標をまず明確にしつつ、その目標を達成できる戦術、戦法を採用すべきではないか。そして、当年度のディフェンス、オフェンスで修得すべき「主たる型」の習熟に専念すべきである。さらにプレーヤー自身がゲームのあらゆる場面で、自分で考え、的確に実行できる選択肢を、どれだけ与えてやれるかが、勝敗を左右するのである。

・目標を持つ、型を持つ

ラグビーは人間の全能力を駆使して行うものであり、まず身体をつくり、スキルを磨き、状況の判断力をつけ、その上に戦術、戦略を積み上げなければならない。そして、この順序は決して省略出来ないのである。すなわち、身体の出来ていない人は自在に走れない、走れない人は重要なポイントに行けず、その場の状況判断もできず、戦術も選択できない、要するに、すべてのことが積み上がらないのである。

故に、目標を定めるといっても、前項で述べたごとく、現代若者のラグビーができる身体づくりだけでも、何年もかかるので、慎重に、そして確実に達成出来る目標にして、毎年の達成感を糧にし、ステップバイステップでいくべきである。
たとえば地区大会で一年目に一勝、二年目にはベスト4、三年目には優勝など、努力すれば達成可能な目標とし、そのために想定される敵との力量差を考慮したディフェンス、オフェンスのスタイルを地域的に、また時系列的に定めていき、それに習熟して、状況に応じキャプテンの指示で実行できるようにすることである。

また、最近多く見受けられる変なことは「継続」が流行しているとなると、10秒間もミスなく保有を続けられないチームが「自陣から展開して、やっぱりミスをして保有を敵に渡し、自陣ゴール前のラインアウトモールで得点される」という愚行などで、各々のレベルで「保有と前進」「攻めと守りのスタミナ」に関して、自チームの実力をどう考えるのか、身の丈にあったスタイルをとるべきである。

・チーム内で役割分担を明確にする

チームとしても、ディフェンスから組織づくりをすべきで「ゲインラインより前で倒すには」また「差し込まれた時は」など、状況に応じた各人の役割を明確にし、その役割を果たす為に必要なスキル修得に責任をもたせること。ディフェンスの確立で、相手チームとの力量差から失点予測できれば、それを超える得点目標が決まる。その得点をFW、BKどちらで、あるいは連携して、どういう戦法でとるかを決めれば、勝算が成り立つわけであり、あとはその戦法を、具体的に、確実に、得点出来るよう習熟すればよいのである。

ここで重要なのは、彼我の力量差の予測であり、これを誤って、たとえば敵より走力がないのにドリフトディフェンス、前に出て敵より横ずれもできないのにピラーディフェンス、間合いを詰める瞬間ダッシュも出来ないのにシャローディフェンスなどをすると、大幅に突破されることになり、ディフェンス網を構築できない。彼我の力量差も勘案し、チームとしてどれだけ前に出て敵をどこに追い詰めるのか、相手の動きを、こちらから規制する能動的な組織ディフェンスを考えるべきである。

また「攻め」でも、自チームが確実にトライできる地点まで一歩一歩進み、そして勝負をかけるべきで、自チームの力ではトライを望めない地点から攻めきれず、敵に保有を渡してしまうのは愚の骨頂である。身の程を知って、敵チームの情報もしっかり分析して「攻めと守りのスタミナ」「プレーの正確さ」「試合はこびの良否」などを的確に予想した地域的、時系列的な戦術、戦略を、リーダーにはゲームメーカーとして、FWにはボールを獲得する者、BKには突破する者として、理解させておき、彼ら自身の判断でゲームをコントロール出来るまで、習熟させるべきである。

・ゲームの進め方について

ゲームでは、主導権がどちらにあるかで疲れ方が違う、守りのスタミナは、攻めのスタミナの倍必要である。故に良い試合運びとは、攻め続けられることであるのは間違いない。しかし、高校生や一般レベルでは、ミスなく攻め続けられることは難しい。特に、自陣でのミスは致命傷となるので、一旦保有を放すことになるが、すぐに保有を取り戻せるキック(味方が取れるキックパスか、敵を背走させるキック)で陣地を取ることも、選択肢のひとつではないか。

さらに、重要なのは「試合運びのテンポ」で、チームのレベルは、まずゲームの展開のスピードではかることが出来る。ある程度のゲームは、「早いテンポで出来る」だけで勝てる。しかしこれには、全員のフィットネスや、リーダーの即時判断と全員の判断の一致、早い仕掛け人、日頃の練習時からの徹底(歩く癖のない練習など)が必要で、そんなに簡単にはできないが、チームとして必ず身に付けなければならないことである。特に状況判断については、日頃から全員に「考える癖」をつけることが肝要で、練習中でも「指示待ち」の癖がつかないよう、「プレーヤー自身が考えながらやる習慣づけ」が必要である。

以上、ラグビーの一番素晴らしいところ「プレーヤー自身がグラウンド上で全身全霊を駆使してゲームをエンジョイ(全力を出しきれること)できること」を体験させてやりたいものである。

※(本原稿は2001年頃?に三菱グループ75周年ラグビー史に横井氏が寄稿したもので、それを読んだ多くの人から、是非紹介したらということで、横井氏の了解を得て、掲載:2007年5月早稲田OB会報)


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No title
毎回横井さんの記事を楽しく拝見させて頂いています。
私自身ラグビーの競技経験はありませんが、息子(現在小6)がラグビースクールにお世話になってから、父親の威厳を保つために勉強を始めました。横井さんのブログと出会った事でラグビーへの理解が深まった事に感謝しています。
さて、なぜコメントを書く気になったかというと、以前の記事で最近の若者の基礎体力・姿勢が根本的に昔と違っているというのを拝見していましたが、実感できませんでした。しかしつい先日、息子の練習を見ていてタックルに入る姿勢がひどかった(背中が曲がり、顔は下向き)ので、基本姿勢を教えるつもりで、パワーポジションを取らせたらナント!出来ない。どんな状態かというと、肩幅に足を開いた直立姿勢から、背筋を伸ばした状態で腰を落す事が出来ない。ヒザを曲げる事は出来るのですが、同時に尻が後方に突き出てしまい、いわゆるへっぴり腰の格好になります。伝え方が悪いと思ってイロイロと言い方を変えるのですが、どうしても出来ませんでした。頭の中は疑問符だらけでしたが、その時に横井さんの記事が浮かんで来て、これが現代病なんだと納得しました。
愚息に対しては、普段の生活時になるべく蹲踞の姿勢を取る事と、ウサギ跳びの姿勢で歩くトレーニングを課しました。長い期間をかけて矯正するしかないと思っています。
ラグビースクールに関わっている者として、良く耳にする言葉として、<タックルは低く入れ!顔は上げろ!背筋は伸ばせ!>がありますが、今回の事件で子供達はやらないんじゃなくて、出来ない身体の状態なんじゃないか?という思いを強くしました。出来ない事には理由があって、その理由を指導者が正しく理解する事が非常に大切なんだと実感しました。その事に気付くきっかけを作って頂いた記事を書いていただいた横井さんに感謝を伝えたくてコメントしました。ありがとうございました。
(娘2人は普通に姿勢が取れます。男女の差があるのかも? 今後検証するつもりです)
bunさんへ
そうなんです。ようやく分かっていただきましたか?だから、指導者は現場で、よく観察して、「プレーヤーがなぜ、出来ないんだろう」と考え続けないといけないと、私は言っているのです。そして、その気付きから、対策を考えることが出来るのです。
ところで、ウサギ跳びの姿勢で歩くのは、あまり無理させないようにして下さい。成長期の子供には気をつけて下さい。また、そのように難行のようにさせると、訓練が嫌になりますよ。そうじゃなく、遊び感覚の中で、身体が鍛えられるような訓練方法を考えて下さい。
だから、私は、タックルのない「タッチラグビー」をさせて、高校生になって、身体が出来てから、15人制ラグビーをさせた方がよいと言っているのです。
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プロフィール

Yokoi Akira

Author:Yokoi Akira
横井章(よこいあきら)

ラグビークリエイター
現役時代は左CTB、ジャパン10年で17キャップ
    (当時は、キャップ対象試合が少なかった)

1968年、オールブラックス・ジュニアに勝利
1970年以降5シーズン日本代表の主将を務める
    (いまだに、歴代最長記録)
1973年、英仏遠征、日本ラグビー史上初の海外
     テストマッチ、当時世界最強のウェールズ
     と対戦、写真は、その時の幻のトライ
2000年、現場に戻り、100数チームにアドバイス

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