2011. 12. 08  
新しい読者に、ブログ開始時の記事を、再度紹介しています。
今回は、201024日:「身の丈に合ったラグビー」です。だいぶんの長文になりますが、我慢して読んで下さい。


に紹介するのは、2008年9月、関西学院大が49年ぶりに
同志社大を破った時に、藤島大にインタビューを受け、彼がまとめてラグビーマガジンに載せたもの。

今迄に載せたことと、だいぶん重複するので、退屈でしょうが、私が使った「身の丈に合ったラグビー」という言葉が、この後
はやり出した時のものなので、敢えて載せました。

<本文>

本誌、およびラグビーマガジンの熱心な読者であれば、おりに
ふれ、その名を目にしているはずだ。
ジャパンを語れば、どうしたって『横井章』をよけては、 前へ進めない。いまカッコつきで紹介したのは、ほとんどその存在が『古きよきジャパン』と『接近戦』象徴にして記号だからで
ある。

1968年、オールブラックス・ジュニアを破った名CTB主将として迎えた71年のイングランド来日では、大健闘の初戦途中に無念の負傷退場し、あの伝説の「3―6」・互角の次戦へ出場はならず、名将・大西鐵之祐をして「横井ありせば」と悔しがらせた。

大阪の大手前高校ではバスケットボール部所属、リーダーとして、低い屋根の下で練習して低いパスからの速攻を磨くなど工夫をこらし各大会に実績を挙げた。
早稲田大学へ進むとラグビー部へ。初心者なのに新人から早慶戦に出場している。伝統の接近プレーを「しろうとだから極端なまで理論どおりに実践」。バスケット仕込みの近接してのパス感覚と独特の身のこなしという特質もあって、まさに申し子となる。

あえて相手に吸い込まれるように近づき、低く強靭な姿勢で、 わずかな空間をつくってのパス。一直線のようであって、かすかに曲線を帯びるコースで攻撃の角度を封じ込める日本式シャローディフェンス。攻守両面での見事なまでの「接近」は、幾つかの
映像と記憶によって、いまも語り継がれている。

接近 連続 展開」。あるいは「展開 接近 連続」。
横井章こそは、大西監督の掲げたジャパンの核心的戦法の最高の理解者にして、最良の具現者でもあった。

三菱自動車へ入社、ラグビー部を退くと、もっぱら社業に励む。定年退職後、沈黙を破るかのように全国各地の高校や大学を
巡回指導、攻守とも前へ出る根本思想を教え諭し、また試合運びの要諦、大勝負での心構えを説いて、さまざまな成果をもたらしている。

イングランドと対戦時のサイズは、165㌢、68㌔。当時としても
小柄な部類である。それでも山の稜線のごとき首から肩のライン体幹のたくましさ、低い重心で、大男を比喩でなしに仰向けに
ひっくり返した。

取材当日は、アドバイザーを務める関西学院大学が、実に49年ぶりに同志社大学をやっつけた。引き揚げてくる選手のひとりが「横井イズムのおかげです」と頭を下げた。なるほど単なる技術論や経験則には収まらぬ「イズム」。その中核にある・「いかに
身の丈にあったラグビーを考え抜くか」を語ってもらった。

--大きなテーマは「小は大を制しうるか」なのかとも思います。現場に戻られて約8年、率直な意見を聞かせてください。

「まず傲慢な話なんですけど、あんまり世界のラグビーを参考にしないんです。オールブラックスにしても最近はだいぶようなってきたけど、仕掛けてから抜きにいくプレーなんて、ずっとループからのショート(で縦に寄ってくる)くらいでしたから。まあ、自分らのやってたジャパンのバックスのプレーは当時の世界最高だと信じているわけでね」

--接近プレーですね。

「去年のW杯で、アイルランドのオドリスコル(CTB)がアルゼンチン戦でしたか、空中のパスに(ボールの軌道をカットするように)走り込んで抜いた。ちょっとずつできるようになってきたな、と。むしろジャパンのほうができない。接点でボールが動きませんから」

--接点でボールが動かない?

「結局、(クリスチャン)ロアマヌにしても遠藤(幸佑)にしても、姿勢の高いまま、ボールを片手で持って当たるから、接点でボールを動かせず、ラックになってしまいディフェンスのセットは動かない。国内では強くても、国際試合で片手が通じるほど強くはない」

--トップリーグからも接近プレーは消えつつあると。

「ほとんどの選手がラグビースクール出身です。小さい頃は芝生のグラウンドはほとんどなかった。転んだらすりむいて痛い。こわい。子供だから、本能的に倒れないように相手に対して手を出してしまう。そのクセが抜けない。箸の持ち方のようなもん。いま、ほとんどの選手は低くなろうとしても頭が下がるだけでヒザを折れない。もし芝生がないのなら、子供は、サッカーとバスケットとソフトボールをやっていたほうがいいと思うくらいです」

--そういう話もうんと伺いたいのですが、今回は、体の小さい人間、チームでも工夫すれば勝負できるのでは、というところを教えてください。

自分の身の丈に合ったラグビーをする。この当たり前のことができない。
たとえば、 トップリーグのある試合では、私が夜中にビデオで
カウントしたところでは、120回もゲームが切れていた。だいたい、反則が40回、タッチキックなどで40回、ノッコンなど単純ミスが40回。問題は、単純ミスです。
解説者は優しいから、 汗でボールが滑ると言う。でも、この数を異常と思わなくては。
長いパスを、外国人と同じように放る能力がないのに、ワイドな
ラインで攻める。パスの回数の多いアタックをする。それこそ、汗でボールが滑るかもしれないのに、 片手でハンドオフして、ずらそうとすると、観客まで感心する。

このゲームに限らず、大半のチームの指導者は、なぜミスが出るのか、自分のチームの能力で、ミスのないラグビーをするには、どうするのかを突き詰めない。ボールを両手で持てばミスは減る。コーチに聞けば、わかってますと言います。じゃあ、わかってることを何でやらへんのや、ということ。そこが問題なんです」

--身の丈に合ったラグビー…。

「自分の手元にはこういう戦力がある。相手はこうだ。それこそが戦いの基本。ゲームとは勝つために行うのであって、何か他の目的のためにあるのではない。なのに、世界はこうしてるから、と、よく考えもせずに、なりゆきの自滅ゲームをしている。なりゆきだから、その日、ミスをたくさんしたほうが負ける」

--つまり長いパスの際立つ名手がいないのなら、ワイドラインは引っ込めるべきだと。

「そう。早稲田がワイドラインで勝った。その時は、清宮監督が、毎日1時間かけてロングパスを仕込んだ。もしワイドで攻めたいのなら、それだけの準備が求められる。それもしないで、なんとなく外国もワイドだから…と採用してミスを繰り返すようなチームばかりです。持ってる素材にはできないラグビーをさせている。
そうではなくて、できることをしなさいと」

--平均的日本人には、長いパスよりも短いパスが向いているのは確かですよね。

「腕の力、手の大きさが、外国人とは違う。そもそも長いパスは一点でしかとれない。どうしても山なりになるからタックルのポイントも絞りやすい。カウンター攻撃ならフワッとして長いパスもいいけれど、仕掛けのアタックでは通用しない。短く早いパスなら、ここでとれます、ここでもとれます、と、どこでとるかの選択肢は広がる。抜け切れなくても絶対に(相手陣へ)差し込むことはできる(図表)」

--自分の頭で理論、戦法、練習法、を考えられる指導者が少ない。

「よそのよいことを何でもしたくなる。まねをする。すると、どんどん(することが)増えてくるわけですよ。どのチームにも15もサインプレーがあると。しかし週に3、4回、1日1時間少しの練習で、バックス7人で反復する時間なんて、せいぜい15分や。それが
年間何回あるのか。そんなサイン、ミスが出て当然ですよ。これも身の丈を考えて、サインプレーは減らさなくてはいけない」

--おそらく大西ジャパンは、焦点を絞った練習をしていたのでしょう。

10年間、サインプレーは原則カンペイだけです。それを変化させて応用していく。いくつか増えたとしても、大試合の前には
減らしてしまう」

--小さい人間、チームの戦い方を具体的に。

「先ほど述べたように、接点でボールを動かす。外国人のオフロードは、タックルの上に乗っかってボールをいかす。しかし、小が大を相手にそれはできない。ならどうするか。下に当たって、ボールを動かすほかないでしょう。体格差があって、ぐちゃっとつぶれてしまうのなら、当たる寸前に動かす。そのためにも肩をつくる。
アタックだけでなく、前へ出るディフェンスにも必要なんです。
(どうやって肩を?)フロントローは、高校3年間で肩をつくってる。バックスもスクラムマシンに当たればいい。1か月、2か月、毎日、カタイものに当たることです。成章(高校)にひとりだけ、私の教えたことをホンマにやり通した部員がいた。校内の電柱に当たりました。体は小さいけれど、壊し屋になりましたよ」

--小さい人間なりに強い体を。

低い姿勢。瞬間ダッシュ。ここは反復するしかない。トレーナーがいるなら必ずアジリティーを中心に組み込んでもらう。もちろんフィットネスも大切です。ある外国人コーチは、現代ラグビーは左右分業制だからスタミナはそれほどいらない、と話していた。でも、それはオールラウンドな選手が15人いればこそなんで、
ここも横着にマネはできない」

--そして。

「敏捷性、巧緻性しかない。ただしコンタクトを忘れてはならない。芯をずらして低い姿勢でボールを動かす。広義ではオフロードなんでしょうが、外国人の方法と混同されてしまうので言葉は変えたほうがいいかもわからない。
繰り返しですけど、自分たちのできることを完璧にやる。突き詰める。小さいチーム、素材の苦しいチームは敵陣でプレーしなくてはならない。それなら、どう敵陣へ入るのか。その方法を考え抜く。そして自分たちのラグビーを遂行するための体をつくる。練習でやってないことは試合でもできない。だからこそ練習内容を絞り抜く。
スポーツに天才はいません。なぜなら脳の指令で体は動くんですから。経験則なしにプレーはできない。努力あるのみですよ」

--「小さな人間の強さ」はありますよね。

「ラグビーとは自分より有利な人間をいかす競技。その意味では、小さい者は、自分より大きな人間を走らせることに長けているはず。もっとも最近は、 小さな選手まで自己中心的なプレーで自滅している」

--そして、小の側は考え抜く。

考えながら練習では常に100㌫以上の力を出す。そうすれば試合では余裕を残して80㌫でプレーできる。逆はあかんのや。身の丈に合ったラグビーとは何か。なんでそうするのか。なぜ
そうなのか。そういう態度が指導現場に足らないと思いますね」

取材後、花園ラグビー場から京都駅近くまで愛車の三菱で送ってもらった。いやあ抜け道、裏道、自由自在、なんべん小さな角を曲がったか。「通勤時代に最短時間を考え抜いたんや。なんで、なぜって」



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プロフィール

Yokoi Akira

Author:Yokoi Akira
横井章(よこいあきら)

ラグビークリエイター
現役時代は左CTB、ジャパン10年で17キャップ
    (当時は、キャップ対象試合が少なかった)

1968年、オールブラックス・ジュニアに勝利
1970年以降5シーズン日本代表の主将を務める
    (いまだに、歴代最長記録)
1973年、英仏遠征、日本ラグビー史上初の海外
     テストマッチ、当時世界最強のウェールズ
     と対戦、写真は、その時の幻のトライ
2000年、現場に戻り、100数チームにアドバイス

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