2011. 12. 20  
新しい読者に、ブログ開始時の記事を、再度紹介しています。
今回は、201025日:「練習のなぜ?」です。


続いて、「練習のなぜ?」第3章を、載せよう。

3、最近の練習で、少し変だなと思うこと。

①なぜ、マーカーを置いて、その通りやろうとするのか?

たとえば、ストレートランでパスする練習をするのに、あえて内側へ走るようにマーカーを置いて走らせ、なお且つ外側へパスせよとやらす。
何故、内側へ走らすのか聞いてみると、ゲーム中ゴールラインに直角に走れないものだから、あえて内側に走ってまっすぐ走れるようにするのだという。それこそ、今どちらを向いて走っている
のか、イメージすることの妨げになるのではないか?
そもそもゲーム時にはマーカーは置いてないのである。自分がどちら向いて走っているか?それを認識しながらやること
こそ練習ではないのか?
練習方法を最初に教える時くらいは、マーカーを使うのは、やむを得ないとしても、できる限りプレーヤーが自分で、グランドをどう使うか、イメージできるように、マーカーなしでやらせるべきではないのか?
また、内側へ走って外へパスしろなんて、BKでも難しいのに、
FWにまでそうやらす。
それよりゲーム時は少し斜めに走った状態から、まっすぐに走り、次に外に向かって一歩踏み出してパスをするという方が、
余程実際的で、なお且つ、今のプレーヤーの苦手な「外へのサポートへすぐに行けるように」、練習させるべきではないのか?

②なぜ、シークエンスに書いて、その通りやろうとするのか?

前項と似たようなところであるが、数次のアタックの配置をシークエンスに書いて、その通りに動く練習をするチームが多い。
たとえば、5次のアタックをシークエンスに書いて、接点となる
予想のところに、ダミーを持ったディフェンサーに見立てたプレーヤーをおく、そしてアタック側が攻撃を始めるが、2次3次になると接点予想と合わなくなる。
そこで何が起こるかというと、アタック側が、ダミーを持っている
ところへコースを変えて、当たりにいくのである。また5次目は、 ディフェンスが居なくてパスをするのだが、前へ進んでいて、 インゴールで回しているのである。

これで、どんな弊害が出るかというと、実際のゲームでも5次のアタックをやり続けようとするのである、それだけのつなぎをミスなく出来ないのにである。
また、その間に自分の目の前に「抜けるスペースが出来た」のに、そこを
つかずにシークエンスをやりとおそうとするのである。

また、インゴールでパス?こんな変なラグビーが、ある筈がない。

これでは、プレーヤー自らが自分の前の状況を判断して行動
するという、ラグビーの最も重要で、最も特徴あるところを、自ら放棄しているようなものではないか?
あるチームでは、15-15でキックゲームをやらせたのだが、
「横井さん、これをシークエンスに書いて下さい」と言われて、
唖然としたことがある。これも、論外である。

③年に数回も練習しないサインや、ムーブを何故やらせたがるのか?

チームによっては、基本的なムーブやサインを入れると10を超えるものをやろうとする。昨今練習時間が短くなり、たとえば、パートの練習で、なお且つ、BK全員のラインアタックとなれば、週の練習日の内の1~2日で、時間にして何分もない状況で、また
怪我人やメンバーが変わることを考えれば「同じメンバーで、同じムーブを年間何回練習できるのか」という状況で、なぜそんなに多くのものをやろうとするのか?
当然練習不足で、ゲームで使えばミスをするのがオチである。
できる限り絞って、但し少々ボールの出のタイミングが悪い状況でも完遂できるようにすべきではないか?

④何故、練習でプレーヤーの持てる力の100%を出させようとしないのか?
 
練習でミスをすると、即「アゲン、練習にならないじゃないか」と
怒る指導者が多い。しかし、実際のゲームでは、そういつもうまく行くのだろうか?確かにミスの原因、責任の所在をはっきりさせるのは、当然重要であり、腕立てなど罰を与えるのも必要であるが、もっと重要なのは、練習では、自らの能力の限界まで挑戦させること、あるいは経験し得ていないことに、 挑戦することを恐れさせないことではなかろうか? 
怒り過ぎると、プレーヤーがミスしないように80%の力でやろうとするなら、本末転倒だろう。

また、そうして挑戦させたことで起こったミスは、きっちりミス処理させた後で、アゲインにすべきであろうし、
たとえばパスがそれただけで、ノッコンにならない場合などは、
続行させてやる練習をやるべきである。実際のゲームでも、その場合の方がチャンスになる場合が多い。

さらに、もっと積極的に、プレーヤーが経験し得ないスピードに挑戦させる練習(たとえば坂道を走り下りるなど)を行うべきである。
また常にゲームと同様に負荷をかけた形で練習させるべきでないか?たとえば、キックの練習といえば、二人が向き合って待ち構えているところへ蹴る。そんな練習をしているから、ゲームで蹴ったボールが敵のいるところへ行くのではないか?待ち構えていないところへ蹴る方が、捕る練習にもなって効率が良いのでは?

また、よくあるのがアタックディフェンスの練習で、「タッチですか?ホールドですか?ガチですか?」「何本やるのですか?」
という質問である。
まずタッチなんて高い姿勢のもとだから、やらせるべきでない、
最初にムーブを教えるのにホールドでやるのは仕方がないとしても、ゲームのための練習なら、基本的にはガチだろう
高校生までは身体の出来具合などあるので、ホールドでやる場合もありかと思うが、早く身体が出来るように推進すべきである。
「ケガ」というのは前向きな気持ちでやれば、身体は自然に対応能力を発揮するものだから却ってケガしないものであるホールドなんて中途半端なやり方の方が、ケガしやすいというのも真理ではなかろうか?

もうひとつの「何本?」と聞いた奴の心理は、「3本なら、3本出来るように、80%で3本やろう」と計算する者が多いということである。しかし、練習というのはそういうことだろうか?「何本であろうが、一発目から自分の100%以上を出そう、そのあと50%に落ちても限界に挑戦することが重要だ」
と思うように、指導すべきではなかろうか?

⑤なぜ、気の向かない練習をやらせるのか?

年齢の高い指導者は、自分の経験で、きつい、しんどい、いやな練習こそが、克己心も鍛えられて良い練習だと考え、それを今の若者に強要しがちだが、本当にそうだろうか?
確かに基本技を根付かすには、繰り返し反復練習が必要なものが多いが、それでも飽きが来ないよう目先を変えて、実は同じことを鍛えてるといった工夫をしたいものである。また、プレーヤーがいやだなと思う練習は、結局は身に付きにくい
たとえば、誰もディフェンスの練習は嫌いなものだが、3-3の
アタックディフェンスの形のところに、さらにFWの位置から3人のディフェンサーをつけてやると、どうだろう?
そして、 6-3でターンオーバーまでと言ってやると、たいがい、
ディフェンス側のほうが楽や、得やということで、ディフェンスにまわる者の方が多くなるのでは?

⑥ゲーム前の気合入れは、単なるパフォーマンス?

今、私が気になっているのは、ゲームの最初から、100%の力を出させるには、どうすれば良いかということである。
最近は、ゲーム直前に歌を歌い、大声で気合いを入れ、泣かんばかりの形相でグランドに出ていくプレーヤーをみて「気合入ってるな」と見ていると、ものの何分も経たない内に、あっさりトライをとられたりする。あれは何だったのか?ただのパフォーマンスだったのか?とがっかりすることがある。

ゲーム前の練習も、みんな揃って、いつもトレーナー主導で決まったことをやるだけ、試合に臨む気持ち、身体をつくっていくのは、各個人によって違うのではないか?
大昔のことを言えば、ゲーム前の気持ちのつくり方は各個人、ゲーム前の練習はキャップテンが主導、その時の敵に対して「今日はこのことを忘れるな」という意味で、その練習を直前にしたような記憶がある。

もともと日本人は農耕民族、ゲームの最初から100%を出せるように、じっくり準備をしたものである。
対して外人チームは、ゲーム前の練習は軽くウォーミングアップするだけ、そして、ゲームをやっている間にコンディションを整えながら、敵の情報も収集し戦い方を変えてくる。しかし、彼らは狩猟民族、そんな中でも何かあれば、瞬間湯沸かし器のように熱くなれる。
しかし最近、U20の外人チームを見ていると、ゲームの最初から100%でやってくる。外国も変化している。どのようにしてるのだろう?

「ラグビーは、心と体が連動するスポーツ」、ゲームの最初にどのように心をつくっていくか?
今の日本の若者の心のつくり方を、模索しているところである。

日本のラグビーを良くするために、何をしなければならないか?指導者の皆さん、現代っ子をを指導するのは大変だけど、よく
熟考して、 正しい道に導いてやってほしいと、切望してやまないものである。


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プロフィール

Yokoi Akira

Author:Yokoi Akira
横井章(よこいあきら)

ラグビークリエイター
現役時代は左CTB、ジャパン10年で17キャップ
    (当時は、キャップ対象試合が少なかった)

1968年、オールブラックス・ジュニアに勝利
1970年以降5シーズン日本代表の主将を務める
    (いまだに、歴代最長記録)
1973年、英仏遠征、日本ラグビー史上初の海外
     テストマッチ、当時世界最強のウェールズ
     と対戦、写真は、その時の幻のトライ
2000年、現場に戻り、100数チームにアドバイス

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